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| 2004年8月10日脱稿 |
| 慶應義塾大学 商学部 教授 権丈 善一 |
| 残暑お見舞い 残暑お見舞い申し上げます。 そしてメールを出しても、ファックスを送っても、何の連絡もない!・・・・・・そう思われていた皆様。 返事が遅くなってごめんなさい。 先週、河口湖でのゼミ合宿を終え、 「○○のテレビ番組をビデオに録画しておいておくれ。しばらく連絡取れなくなる」 との言葉を学生さんに残し、行方をくらませておりました。 |
そこで、まずは、枕のお話。 以前、「尊敬する経済学者は、いったいどんな人なんですか?」と問われたことがある。 「歴史上の人物だね。 でも、今、日本にもひとりいる。 2001年に朝日が『週刊 百名山』を出したんだ。 毎号、著名人が登山体験のエッセイを書くんだけど、 第8号「槍ヶ岳」の執筆者が一橋大学の石弘光先生なんだよ。 百名山の中でも槍だよ、槍。 これは、めっちゃくちゃすっごい話だぞ。 大学生の頃、年間100日山に入っていたんだって。 大学1年で冬の槍穂縦走をやったんだって。 大学4年の秋には、新田次郎『孤高の人』で有名な難所、北鎌尾根を登ったんだってよ。 主人公の加藤文太郎は厳冬の北鎌尾根で遭難したんだけど、 あの尾根は、秋でもものすごく厳しい。 それから、夢は、5月にスキーを担いで行って槍沢を大滑降することだってさ。 俺がこんなに憧れを抱く経済学者は、他にいないぞ。 いつか北鎌尾根の話を詳しく聞いてみたいんだけど、 まだ、写真でしかみたことないんだよな。 北鎌尾根じゃないよ、石先生を――――」 |
| そして・・・ 2004年8月某日の夕暮れ |
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今日、一日歩いた行程を振り返りながら、 「あっ、前線の雲だ」とつぶやくと、後ろから声が。 「すばらしいねぇ、この空。 山を下りたら、また、下界の生活ですよ、旦那」 ・・・・・・えっ、僕は旦那ではないぞ、おいおい。 「満員電車に詰め込まれて、毎朝通勤。 痴漢に間違えられないように、つり革を握っていなきゃならない。 この夕日をみてくださいよ、旦那。 なんなのかねぇ、あの下界の生活は」。 |
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翌朝の日の出。 4時半に歩き始めたおかげで、見わたすかぎり人っ子一人いない山歩き。 雲海より昇る朝陽を我一人のものとして愉しむ。 |
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そして翌朝も4時半に活動開始。 朝陽を背に受けて、我が頭上に後光が射す。 ついに俺も悟りを開いたか!!! ・・・・・・・・・ なわきゃないだろ。 近所の山奥でなくインドの山奥で修行中に同じ現象にでも遭遇すれば、 そりゃ、何か勘違いしてしまうだろうよ・・・いわゆるブロッケン現象。 |
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下山して、温泉で汗を流した後、東京に向かって車を飛ばす。 深夜、首都高が都心にさしかかり、新宿の街並みを目の前にしたとき、 「満員電車に詰め込められて、毎朝通勤。 痴漢に間違えられないように、つり革を握っていなきゃならない。 この夕日をみてくださいよ、旦那。 なんなのかねぇ、あの下界の生活は」 というおじさんの言葉が思い出されて、胸がぐっとつまる。 なんか間違えているよ・・・この国の国造り。 日付も変わった丑三つ時に家に着く。 しばらくぶりにパソコンを開く。 数百数十個に及ぶメール、そしてファックスが数通。 > 先生へ。 > > △曜日の「○○」録画しました。 > 今週は大学にいらっしゃるんでしょうか? > > 適当なときに研究室に伺います。 最も重要な連絡を、メールの山から拾い出して確認。サンキュー。 そしておじさん同様、当方も下界での生活がはじまる。しかも、瞬時にして。 |
残暑お見舞いの追伸 同じ山でもメールの山から、これまた見ず知らずの人からの下記の一文を発見する。 内容は、論理的に問題ないことを確認。 職業柄、わたくしの論として公開するわけにはいきませんので、 あなたの論点からの公的年金バランスシート論への批判として、ここに紹介させて頂きます。 そして、この論点への反論は、わたくしが受け止めて行くことにいたしましょう。 一部、さすがのサンチョ・パンサでも(?)冷や汗ものの穏やかならぬ表現がありますけど、 当方で手直しするにしても他に適当な言い回しも見つかりませんから、 まぁ、明るく行きましょうか(笑){※]。 では・・・ |
| On Sat, 7 Aug 2004 01:59:29 +0900 (JST) > 初めてメールいたします。 > > 昨日、先生の「やれやれの年金バランスシート論」を読み、救 > われる気がいたしました。 > > 日頃より高山教授の破綻した論理が堂々とメディアから流され > 、それに理路整然と反論する専門家が全くいないと言う状況に > うんざりしておりました。 > > 先生と同じく私も日頃より高山教授の学者としての態度には > 大いに疑問を持っており、氏が学者と言う肩書き(この肩書きが > 「正しい」ことを言っている」と世間に思い込ませます。)で世間に > 破綻した論理を信じ込ませ、年金不信を煽った責任は重いと思っ > ております。 > > また、それと同時にこのような破綻した論理を抹殺できない日 > 本の学会のレベルの低さ(間違いに気がつかないのか、反撃を > 恐れて議論のできな い風潮があるのか、または他に深い訳が > あるのかも知りませんが)に嫌気をさしていました。 > > このようなときに、ある人から先生のホームページを教えてい > ただき、日本にも、間違いを間違いといえる学者がいたのだと > 少し安心いたしました。 > > しかし、高山教授が学者の肩書きでものを語っている以上、そ > の理論が間違っていれば、間違いであると否定するのは学会の > 責任だと思います[1]。先生には数少ない正論の言える学者として > このような破綻した理論を抹殺していいただき、広く世間に流布され > ることのないようお願いいたします > > 高山教授に関しては、バランスシートについて先生が論理破綻 > を指摘されていますが、もう一つ、損得(払ったものの何倍の > 給付がもらえるかというもの)の問題で論理破綻した主張を行 > っていることをここで指摘させていただきます。 > > この論理破綻した主張についても、抹殺されることを期待いた > します。 > > 損得の問題を考えるとき、重要なのは拠出時と給付時で大きく > 時点が異なるため、その換算率(割引率)に何を用いるかが非 > 常に重要となることは、ご理解いただけると思います[2]。 > > 高山教授は、 > @この換算率(割引率)として厚生労働省が、賃金を用いたこ > とを攻撃し、運用利回りを用いるのが正しいと主張して、正し > い計算方法では払ったものが戻ってこないと主張しております > 。 > (http://www.ier.hit-u.ac.jp/~takayama/pdf/interviews/datafocus/diamond0311.pdf > ) > A一方で、スウェーデンで導入されたみなし拠出金立て方式を > 払ったものが戻ってくる制度と評価しております。 > (http://www.ier.hit-u.ac.jp/~takayama/index-j.html) > > この@とAは明らかに論理破綻しております。なぜなら、スウ > ェーデンの年金制度は、払ったものに賃金上昇率を運用利回り > とみなして元利合計を計算したものが戻ってくる制度です。す > なわち、賃金を換算率(割引率)として用いて払ったものが戻 > ってくる仕組みとしているのです。 > 一方で厚生労働省の試算が賃金を換算率としているため、おか > しいと主張し、一方で賃金を換算率に用いているスウェーデン > の制度を評価しております。全く理解不能です。 > > この論理矛盾を避けるためには、高山教授のとる道は2つに1つ > のはずです。賃金で換算した厚生労働省の試算を適切と評価す > るか。スウェーデンの仕組みを払ったものが決して戻ってこない > 制度と評価するか。いづれかしかありません。 |
--------------- あなたが、どのようなお方なのかは、伺わないでおきます。 |
| [※] メールの掲載許可は、執筆者よりいただいております。 [1] 仮に、野党が高山先生の年金改革案に完全に乗ったのであれば、政府・官僚もその改革案の理論的基盤を批判しやすかったと思います。しかしながら、野党も高山先生の案には距離を置いていたように見受けられます。そうなると、行政サイドはメディアから流れ出る高山年金論への批判者として登場しづらくなる。この時、学会、研究者間での議論がしっかりと機能しなければ、世論のクオリティが低落するとういのは、わたくしも「勿凝学問15x」で指摘しているとおりです。 ただし、公的年金のバランスシート論への批判は存在した、ということはご理解ください。その批判が、無視されてしまったのです。ゆえにわたくしは、研究者コードといういわずもがなの話を持ちださざるを得なくなったわけです。 もっとも、年金バランスシート論のおかしさに気づいた研究者は、わずか数人。ほとんどがバランスシート論を疑わず受け入れて信じたというのが、悲しいかな、ご指摘のように学会レベルの実状のようである。「勿凝学問15x」で触れている学会で、高山先生のご報告に対して「目から鱗です」とのコメントがありました。これが、わたくしの発言を促したのだと思えます。 [2] 割引率の問題については、次のような形で、「勿凝学問15x」の方で触れましたが、あなたの視点の方が、問題をクリアーに示すことができると思います。 |